2001.6.27 更新

第4回 介護を要する方の口腔ケア

私の都合によりしばらく休ませていただきましたが、今月からまた再開いたしますのでよろしくお願いいたします。

識に障害のある(痴呆の)方や障害がなくても自分の意志を介護する人に伝えられない方の口腔ケアも大事なことです。ともすれば介護をする人の考えや都合を押し付けがちですが、それぞれの疾患の特徴を理解し、ケアすることが必要です。
それぞれ注意しなければならないポイントを簡単に書いておきましょう。

◆アルツハイマ−(健忘)型
  このタイプはちょっとした物忘れから健忘、徘徊といった重度の痴呆へ進んで行きます。これは老年期になってから自分が失ったものへの不安がおおきな要因になっていると言われています。すなわち、仕事、人間関係、家族、社会での役割、経済的収入、健康等です。  
多くの場合患者さんは間違ったことをしたり、場合によってはケアしてる介護の人に暴力的であったり、不遜な態度を取る人がいますが、これらのことを優しく容認してあげ、なるべく患者さんの不安を増強させない様心掛ける必要があります。
◆脳血管型
  このタイプは脳硬塞、脳出血などに続いておこり、脳の一部に障害を受けるため、場所によっては、言語が不明瞭になったり、失語症を伴います。また運動野がおかされると、手足の運動障害、あるいは扁麻痺などの症状も現れ、著しい知的障害を引き起こす事もまれではありません。  
この場合介護者の言っている意味は解っていても手足が上手く動かせない、あるいは口唇や舌が上手く動かせないためにケアが出来ない。また言語障害のため意志が伝わらないといった事がおこり、このため焦り、怒りに繋がってしまいます。ひとり一人になるべく同じ人がケアにあたり、簡単にできることからだんだん複雑なことへ段階を踏んで、気長に対応して行くことが必要です。

回も書きましたが口腔ケアはただ単に口の中をきれいにするだけでなく、これを行うために着替える、ベットから起き上がる、あるいは洗面所まで歩く、といったことでなるべく寝たきりにならないように、また全身に刺激を与え痴呆を進行させないなどの効果もあり、その人のクオリティーオブライフに大きく貢献するものです。

ちいち細かいことに捕われず、あまり完全を求めずなるべく自立を尊重し(手をだし過ぎない)、気長に習慣付けて行きましょう。

護が必要となっても正しい口腔ケアをすることでクオリティーオブライフ(QOL=生活の質)は向上します。ひいては病と戦う気持ちの向上にもなりますのでしっかりケアをしてあげましょう。

介護の必要な方の口腔ケアで気をつけること
一番リラックスした時に行う。
できれば習慣化させる。根気強く。
アルツハイマー型なら何人かの気の合った人(グループで)と行う。
脳血管型は一対一でゆっくり行う。
できるだけ寝たきりでは行わない。
義歯をはずして清掃することを習慣付ける。
好きな音楽を聞きながらリラックスして。
合間に会話を入れながらゆったりと行う。
  (安井 利一 監修、大人のための歯と口の健康作り医歯薬出版、2000.より引用)


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