2000.7.19 更新

第1回 大切な口腔の健康

齢化社会を迎え、さまざまな場所で元気な高齢者の姿をよく見かけます。また一方では不本意ながら身体あるいは精神機能の低下により、介護なしでは生活もままならない方もいらっしゃいます。

を含めた口腔は摂食ばかりでなく発語、表情によるコミュニケーションになくてはならない器官です。この大切な器官をどのようにしたら清潔に保ち、快適な生活が送れるか、また不幸にも介護が必要になったときどのような介護の方法、介護グッズがあるのかを紹介していきたいと思います。

ず2枚の写真を見て下さい。[写真1]は現在私の診療室に元気で通われている88歳の女性の患者さんです。虫歯はちらほら見られるものの歯肉の状態も良く、現在28本全部ご自分の歯で、なんでも良く食べれ、毎日楽しくご近所の方とお花を作っているそうです。

[写真2、3]は老人性痴呆が進み、生活していくうえでかなり介護が必要な方の口腔内です。上下とも義歯が入っており、口腔粘膜は発赤し、白っぽい苔のようなものが粘膜にくっついています。

これはカンジダを主とする真菌(カビの一種)が口の中にはびこることによっておこるカンジダ性口内炎とよばれるもので、取っても取ってもつぎつぎはえてきます。

かなか良い薬がなく治療に手こずります。抗真菌剤の投与と含嗽(うがい)、ブラッシングで[写真4]のようにきれいにすることができました。

齢者になると若い人とちがい、健康であってもさまざまな運動機能、生理機能が低下し、思うように口腔のケアができません。また思ったように手が動かずブラッシングも若いころに比べると十分できなくなります。当然唾液の分泌量なども少なくなり、ともすると口腔内が乾燥気味になります。

うなると口腔内の細菌にとってはまたとない環境となり、う蝕、歯周病が悪化するとともに口臭も強くなり、若い人から敬遠されるようになってしまいます。さらに家族の中でも疎外感を持ってしまい、家族とのコミュニケーションまで悪くなりがちです。

た嚥下(えんげ=飲み込むこと)機能も低下し食べ物が食道でなく気管を通って肺に入ってしまいます。歯の回りや義歯についた細菌性プラークも一緒に肺に入り、免疫機能の低下とあいまって誤嚥性肺炎を起こし、最悪の場合は死に至ることも少なくありません。老人の肺炎の7割近くはこの誤嚥性肺炎であるとも言われています。(東京都老人医療センター感染症科)。

上のようなことを頭に入れておきながら、次回からは実際に口腔ケアをどのようにしていけば良いか具体的な方法もお知らせしたいと思います。

口腔内清浄ブラシ

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