私の診療所には多くの子供さんが治療にいらっしゃいます。「小児歯科」なるものが登場したのは、私の大学時代でした。その頃は、歯科はまだ古き良き時代でした。そのせいもあって、子供の治療を真剣に行う開業医は少なかった時代でした。
ところが最近、6歳はおろか、8歳を過ぎても自主的に治療を受けることができない場合があるのです。ほとんどが男の子です。女の子では、小中学年以下の子で抑制治療をしたことは、特殊な事例を除いてここ数年ありません。治療が自主的に受けられない子供に共通しているのは、親の危機感の欠如です。 ブラッシング指導などをしていても、自分の子供なのに全くの他人事のようで、小学生になったから歯磨きは自分でして当然といった態度で見ているのです。あまりにもブラッシング状態が悪かったので、「お母さんもチェックしてあげてください」と言ったら、「私が見るんですか?」と逆に呆れ顔で睨み返されたことが一度や二度ではないのです。親の見識や態度がこういう調子だから、「子供にむし歯が多いのは学校の教育が悪い!」と役場や教育委員会に苦情の電話がかかるのも十分に頷けます。 子供も3歳を過ぎると筋力がアップし、治療に非協力的な子供さんを抑制することが段々と難しくなってきます。しかも、このような子供さんの保護者は、「遅刻・キャンセルの常習者」が多い傾向にあるのでなかなか診療がはかどりません。業を煮やして他の家族にしばしばクレームの電話を入れるのですが、自己中心的な理由ばかりが返ってきます。 先日も、治療の進行が遅いとクレームをよこしたご主人に、「お宅の奥様とお子様は先月○○回予約をされ、そのうち△回は遅刻、○回は無連絡キャンセル、×回は直前に予約を変更されました。お宅のお子様を拝見する際には、ご存知かと思いますが周到な準備と多くの人手が必要で、さらにその間は他の患者様の治療ができません。ですからこのような状況ではご主人の思われていらっしゃるような効率的な診療はできないことをご了承ください」と言ったところ、その日のうちに奥さんから「プライバシーの侵害だ」とお叱りを受けてしまったのでした。 また、最近、男の子で治療になじめない子が増えてきました。こういった子供さんに「ちゃんとできないと女の子に笑われるよ」といっても、「笑われても良い」という返答が返ってきます。最近の男の子に「男らしさ」を求めても、まったくダメなのです。 治療中に「きゃ〜!」と悲鳴をあげるのは、ほぼ男の子です。マンガなどで女の子が悲鳴をあげるシーンがありますが、現実に男の子が悲鳴をあげる様子に接すると、私はかなり違和感を覚えます。ついでですが、かつては笑い話になった、診療中に「お母さん、お母さん・・・」と連呼する子供さん(ほとんどが男の子)も、ここ数年急増中です。 診療の合間には、子供さんと話をしますが、話し好きの男の子が増えた感じがしています。しかし、会話の中に「家庭」のにおいが段々と薄らいできて、特にお父さんの存在がすっかり薄れてしまっています。 それと最近もうひとつ気になることがあります。それは、おじいちゃんやおばあちゃんと孫の関係が変わってきたことです。特におじいちゃんやおばあちゃんが、孫の選り好みをするようになってきたと思います。お母さん方とお話をすると、「おじいちゃんやおばあちゃんが孫の選り好みをするので、子供たちが精神的に落ち着きを欠いて困る」ということが出てくるのです。昔は全くなかった悩みです。そのせいか、昔のように孫の運動会におじいちゃんやおばあちゃんが詰めかけ、応援に大騒ぎをすることはほとんどなくなりました。 こうなってくると、お母さんの子供への責任がだんだんと大きくなってくるような気がします。いずれにせよ、子供にとって難儀な時代になったと思うのは、私だけでしょうか? |
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| <2007.9.5> |
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