僻地に生きる歯科医
「口のケア」って何だろう? 〜その1

高齢者に「口のケア」が必要なわけ

なさん「口のケア」というと、どのようなことを連想なさいますでしょうか。多くの場合は、「歯と歯ぐきをしっかりみがきましょう!」といったスタンスの、学校などで行うブラッシング指導を想像されるかと思います。これはむし歯や歯周病を防ぐということに重きをおいた考え方で、健康な方はこの考え方でよろしいかと思います。

て人間は、私も含めていつかは死んでしまいます。日本人の死因の御三家といえば、「悪性新生物(ガンや肉腫)、心疾患、脳血管障害」です。そしてほとんど場合、最期には肺炎や敗血症を起こして心臓が停止し死に至ります。この時、肺炎や敗血症を起こす細菌はどこからやってくるのでしょうか?

る大学で肺炎や敗血症で亡くなった方を解剖したところ、「口の中や入れ歯の細菌」と「肺炎や敗血症を起こした細菌」が、95%以上の方で一致したという報告がありました。つまり、高齢者、特に介護の必要な方にとっては、「口の汚れが肺炎や敗血症を起こす原因となる」という点から、「口のケア」が一番大切なポイントであるということになります。この点が、健康な方の「口のケア」と大きく違うところです。

口腔内の細菌の90%が胃の中へ!

の中には実に多くの細菌がすんでいます。みなさん口の中で一番汚い部分はどこかご存知ですか? 歯や歯ぐきではなくて舌が一番汚いのです。我々歯科医師や衛生士のなかにも、「口の中」というと歯と歯ぐきしか考えない方もおります。しかし、口全体(これからは「口腔(こうくう)」と呼びます)でとらえると、歯や歯ぐきよりも舌や頬粘膜の方がはるかに汚れております。また、あまり大きな声では言えないのですが、口腔、特に舌や頬粘膜の汚れは、食事の際に食べ物と一緒に胃に流し込まれており、実に口腔内の細菌の90%以上が胃に送り込まれてしまいます。

食べ物を飲み込む能力の低下が招く怖い事態

れともう1つ最近注目されてきているのが、「水や食べ物を取り込んで飲み込む(嚥下)能力の低下」です。この能力の低下によって、水や食べ物が誤って肺に入り込み(誤嚥 [ごえん] といいます)、肺炎を引き起こすケースが少なくないのです。
※嚥下(えんげ)……水分や食べ物を飲み込むこと

間は空気を吸うと肺に空気が入り、水や食べ物を摂ると食べ物が食道を伝わって胃の中に入ります。当然、これをコントロールする弁のようなものがノドにあるのですが、この弁が、老化や脳梗塞などの脳血管障害の後遺症によってうまく働かなくなると、先ほど述べたような誤嚥が起きるのです。

嚥は、特に、水分を摂る時に起こりやすい傾向にあります。お茶や味噌汁を飲むとき、「むせ」の症状が出たら要注意です。誤嚥によって「むせ」がおきた場合、多くの方が「むせ」を恐れるあまり「水分摂取の制限」をします。ところがこの対応策によって血液はドロドロになり、再度脳梗塞を起こす大きな原因になります。

嚥下体操の勧め

のような状態を防ぐには、普段からの「嚥下体操」が有効です。私の経験では、初期の「むせ」のある方でしたら、この「嚥下体操」でかなり症状が改善します。これらについての詳しい内容はあなたのかかりつけの先生にお尋ねください。
<2006.11.2>

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