僻地に生きる歯科医
介護・医療従事者へのいたわりの言葉?
の診療所では患者さまから金品をもらうことを規則で禁止している。最近では入院しても医療従事者へ金品を贈る習慣はず〜っと少なくなった。これ自体、私は正直言って良かったと思う。どうしても金品の影に潜んでいる患者さまのエゴが見え隠れするからである。


ころが金品を贈ることを止めたら、今度は人間としての感謝の気持ちまでそっくり止めてしまった患者さまが見え始めてきた。このことを論ずるのは長い間我々の世界ではタブーであった。しかしこれが若い人、特に介護に携わる人にとっては、非常に超えがたいハードルになって彼女たちの成長にブレーキをかけることがある。

近高齢者の治療をして気づくことがある。義歯を装着し調整も完了、「これで大丈夫かな?」と思って患者さまに「いかがでしょうか?」と尋ねると、「こんなもんでしょうね?」と答える方がいらっしゃる。「どこか具合の悪いところはありますか?」と聞くと、「保険で作ったからあまりぜいたくも言ってられないし、まあこんなもんでしょう!」と答えるのである。つまり「OK」なのである。その証拠にこの患者さまから紹介された別の患者さまが何人かいらっしゃった。中には初診の際に、「保険で一番安い入れ歯で結構です。ゼイタクは言いませんから。ただ食事がちゃんとできさえすればいいんです。」という患者さまもいる。実はちゃんと食事ができる入れ歯というのが一番むずかしいのである。

々は日々こうした患者さまの情け容赦ないお褒めの言葉に接しているので、別に苦にはならない(本当はなやんでいる!!)ことになっているが、介護などでこういった仕事ぶりを否定するようなお褒めの言葉に慣れていない新人たちは、傍から見てもかわいそうになってくる。

る日在宅訪問診療へ出かけた際に、患者さまに訪問ヘルパーのことで聞いてみた。なんでも「まあまあ」の人で「まあまあ」の仕事ぶりだそうだ。でも私が見た限りでは「非常に良好。」に見える。そしてその方は、いくつか細かい点についてまさに重箱の隅をつつくような指摘をした。私は思わず「あなたのお嬢さんよりどちらが優秀ですか?」と聞いてしまった。するとその患者さまは「そりゃ〜、ヘルパー(呼び捨て)の方だよ」と即答した。

の方にとっては「まあまあ」は、つまるところ5段階評価では5の「大変良い」と同じ意味なのである。しばらくしてヘルパーを派遣したところから、ヘルパーにか関するアンケートが来た。ヘルパーの働きぶりを5段階に評価するのである。見せてもらったら全て「3の普通」にチェックが入っている。事情を聞くと「介護保険で使っているから、高いお金を出して頼むヘルパーに比べてまあまあだから」というわけのわからない答が返ってきた(ちなみにこの方は自費でヘルパーを頼んだ経験がない)。

般にサービス業では評価が「ふつう」は「ダメ」ということである。この先、派遣先から彼女への指導があると思うが、彼女の落胆振りは目に浮かぶようである。
<2004.9.1>

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