私の診療所では、義歯の清掃は歯垢染色液にて汚れている部分を確認してから洗浄している。しっかり洗浄すると総義歯でも熟練者が行なっても3分以上、ある程度の経験者が行なっても5分くらいかかってしまう。クラスプなどが複雑にある局部床義歯ではもっと時間がかかってしまうハズだ。しかも、老人を洗浄する場所に呼んで、義歯をはずして準備するのにも時間がかかる。しかも義歯には名前が書いていないのでとにかく間違えやすい。さらに間違えないように老人を順番に並ばせておくと、なかなかキチンと並ばない。そうしている内に「トイレに行きたい」「私だけ早くできないか?」「タバコを吸いたい」「先にフロに入りたい」など、様々な要求が洗浄をしている人にふりかかる。そのため、義歯の清掃にはかならず補助員が1人や2人必要となってくる。 ソロバンをはじいて恐縮だが、仮に1個の義歯清掃に5分かかったとする。介助者が1人いて次の義歯の清掃に入る時間的なロスが全くなくても、5時間に12個の義歯しか洗浄できない。デーケアーは概ね6時間が基本だから、計算すると12個×6時間×20円=1440円、ひと月25日働いても1440円×25日=36000円である。義歯の洗浄に関しては無資格者のみではできない建前になっているので、当然(マチがやっているので)有資格者がやっているのではないかと(勝手に)思う。しかも補助員が必要なので、この36000円全額は1人では受け取れない。 ここで大切なことは「マチの施設での料金の設定は町長や議会の承認を得ている」という点である。つまり義歯の清掃が1個20円ということは行政側も納得し、地域住民の代表者の集まりである議会も「適切な値段である!」と承認したのである。 だいぶ昔の話であるが 私が香港に行ったとき、香港の下町のような所に毎晩夜店が立っていた。ここの夜店は黒社会が仕切っており、店の人はほとんどが中国大陸からの不法越境者である。そのなかに「牙洗」と称して義歯をあらう夜店があった。これが当時のレートで義歯1個が約100円であったと記憶している。 そうなると日本の歯科衛生士は、香港の無資格者による義歯洗浄の1/5の評価しか受けていないことになる。こういった役所の施策の中にも歯科軽視が如実に現れていて、かなり不快な感じがしたのは考えすぎだろうか? |
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| <2004.8.4> |
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