僻地に生きる歯科医
介護保険の意外な影響〜「風が吹けば桶屋が…」理論は未だ健在?〜

宅訪問診療(往診)を始めてもう10年近くが経つ。この往診活動を続ける上で非常に困ることが一つある。特に地方のように人口が限られる地域では、一般に口コミが非常に有効な経営上の武器になる。しかし、往診の場合「口コミ」というものがほとんど期待できないことが多い。こういうと「介護している家族どうしのコミュニケーションがあるのでは?」とおっしゃる方もいるかと思うが、介護している家族は社会から隔絶しているケースが多く、1人悩んでいるケースが多いのである。特に当地北海道では親子が別れて住むケースが内地(本州)よりきわだって多い。そのため、介護している方はほとんどが年老いた配偶者で「長男の嫁」というケースは意外なほど多くない。そのためハタから見ていると「半病人が病人の介護をしてる」ようにも見えてくる。

の患者さまで寺の住職さんがいらっしゃった。その方に「お年寄りの方に往診のことを話したいので、どこかお年寄りの方が集まるところはないでしょうか?」と下心丸出しの質問をしたことがある。すると意外にも住職さんは「介護保険が施行されてから、寺と家庭の絆が薄くなってしまった」というのである。なんでも、「老人は限られた収入で暮らしている。そこに介護保険の徴収が始まった。まあ、平均して3000円前後だろうか。すると生活の中で3000円前後削ろうとすると、寺のお布施が丁度よい金額だそうだ。 最近だと、檀家廻りをしても居留守を使われることがある。」そうなのである。

部では、僧侶は大変尊敬される職業である。そういう訳だから、自然に介護の相談もあるらしい。しかし、僧侶は介護保険の知識は少ない場合が多く、逆に僧侶から相談されたこともあった。そんな訳だから、僧侶に少し介護保険の知識を吹き込もうという今考えたら「天を恐れない、バチあたりのこと」をついつい考えてしまった。

の住職はその辺を見抜いたようで「先生、お年寄りが今一番気兼ねなく集まれるところが病院だよ!燈台下暗しとはまさにこのことですよ」と高らかに声をあげて笑った。
住職の笑い声が妙に診療所に響いた。
<2004.2.4>

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