僻地に生きる歯科医
備えあっても憂いは残る〜ある被災地の場合
の住んでいる町には活火山がある。しかも私の診療所からもハッキリその山が見え、時々噴煙を上げている。私の診療所が開業してからもう6回以上も噴火している。初めのうちは何やら大騒ぎをしていたが、今では「あら、また噴火したの!」極めて冷静である。もともと楽天的な見方をする土地柄もあって「これで日本もおわりか!」などと悲劇的な見方は少ない。さらに、「あたらしもの好きで熱しやすく醒めやすい」という当地の気質のせいもあって、ひとたび噴火があって、役所が「防災用品をそろえましょう」などと唱えると、こぞって住民は防災用品をそろえはじめた。

ころが月日がたち、みんなの関心も薄れると、防災用品も単なる「荷物」になってしまう。特に困るのが賞味期限のある食べ物である。賞味期限の切れたレトルト食品、ミネラルウォーター、缶詰、インスタントラーメンなどが何十食もある。診療所の倉庫にはスタッフー同立て篭もっても半月やそこらは大丈夫なくらいのストックがある。新しいものと交換すると何万円もする。避難用のリュックも用意しているが、菓子を子供に取られたり、中の小銭目当てに私の女房に襲われたりして、本当に避難する時には役に立つのか心配である。

は非難する時に最低限の治療が出来るような器具を常に用意している。まさかこの装備が役に立つとは思ってはいなかったが、実際数回利用した事がある。ある地区で噴火が起こり、そこへボランティアとして出かけた時である。この時、意外なものが活躍した。「処方箋」なのである。避難所での薬剤は通常、日赤や大学病院からもらうのであるが、この時に「処方箋」があれば実にスムーズなのである。

かし困ったことも同時に起きた。拠点となる大病院がカルテを持ち出さないで避難してしまったのである。しかもその地区は不幸にも立ち入り禁止区域になってしまった。さらに、個人診療所の先生の中には大都市へ避難してしまった方もおり、患者さんがどのような薬を服用しているのかわからず、大変混乱したそうだ。先生方も被災者なので「被災地に残って、地域住民のために働け」とは言いにくいものの、何か方法はなかったのか?と不謹慎にも思ってしまう。

ケ月ぐらいして再び避難所を訪れると、ほとんどの患者さんは主治医と連絡がとれ、なんとかやっているそうだ。しかし、医務室の壁には「○×病院、カルテ置いて非難、服薬情報アテにならず 注意!」と書いてあった。医療従事者同士の不信は悲しい。
<2003.8.6>

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