その雪の中、私の診療所では3月はグ〜ンと来院患者数が増加するのである。これは3月末で当地を去る人たちが、住みなれたこの町で治療をして旅立つという悲しい需要のためである。あえて名前をつけるなら「過疎特需」とでも言おうか! この「過疎特需」で来院される患者さんは昔からの患者さんたちで、しかもリコール検診を小さい時からずーと続けてきた方ばかりである。かく言う私の診療所のリコールリストは中学校または高等学校を卒業して空欄となってしまう。小さい時からお母さんと一緒にブラッシング指導(歯ミガキの練習)をしたり予防処理をしたりと思い出にはこと欠かない。私にしてみれば手塩にかけて育てた子供達を手放すような無念さで一杯である。しかも、彼等の大部分は「新しい土地でリコールをしてくれる先生を紹介してください」とリクエストするので、なかばあきらめの気持で紹介状を書く。 そう言うわけだから、彼等が大人になり結婚して子供を産み、その子供達が患者さんになり患者の裾野が広がることはまずないのである。なにか都会の先生の下請けをしているような気がしてなんとなく晴々としない。(失礼!) しかし、高校生の全員が当地を離れるわけではない。やはり当地に就職したり、進学する生徒さんも沢山いる。ところが当地に残る生徒さんはほとんどがリコールをしていないし、治療中断も多い。(未だに歯は痛くなければ良いという考え方が支配的であり下手にリコールのハガキなどを出そうとすると保護者から苦情の電話が来る) 私は当地の高校の校医をしているが、生徒ほぼ全員にう蝕があり、80%以上の生徒には歯肉炎・歯周病を認める。おおらかというか無頓着というか、女子生徒で前歯部に4本の歯牙欠損があっても平気なのである。(4本以上の前歯部欠損がある生徒に治療をするように薦めたが半分以上の生徒が特に興味を示さなかった)おそらく、全国有数の劣悪な口腔状況の高等学校であると思う。子供がそうだから親もこうだと決めつけてはいけないのだが、想像がつく。 私はこの状況を少しでも改善しようと様々な活動を行っている。啓蒙用のパンフレットを自作したり、学校で講演会もやらせてもらった。町内会の寄合いやボランティア団体でも発言させてもらった。当地の役所では「健康フェスティバル」と称して様々な方面で活躍している先生を呼んで、健康に関する催事をしているが、どういうわけか歯科は仲間はずれなのである。以前から「歯科も参加させてほしい」と言っていたのだが当局はどうものり気ではないようだった。(もっとも歯科では人は呼べないという本音が見え隠れしているが…) ところがある日、役所から「健康フェスティバル」を手伝ってほしいと電話があった。勇んで電話に出ると、いつもの役所の人と声が違う。それに態度もどうもぎこちない。よくよく話を聞いてみるととなりの町の役所の方からだった。複雑な心境がした。 |
|
| <2002.3.6> |
| INDEX |