当地における身体の不自由な子供たちの治療事情(2)

日『摂食・嚥下障害』の講習会へ行って来た。ある国立大学の先生が講師となり、養護学校で生徒さんに食事をして頂き、それを拝見しながら助言を頂くというものであった。この先生は以前にも御世話になったことがある。非常に仕事熱心で懇切丁寧な指導をされる方であった。しかも偉い先生なのに決して偉ぶったところがなく、だれからも尊敬されるタイプの先生であった。

ころが講習中に、生徒の母親とこの先生との間でちょっとした言葉の行き違いがあった。この先生は歯科医師であり、小児歯科を専攻しておられる。当然のことながら、口腔についての知識も経験も充分に持っているかと思う。その専門的立場から、上手に摂食できない理由に「歯肉がこんなに腫れているし、しかも非常に大きなムシ歯があります。これでは上手に噛めませんよ!」とアドバイスした。しかしこの母親は「そんなことはない!」と頑固に否定するのである。

習会が終わってその帰り際に、あの母親から声をかけられた。なんでも一度診てほしいとのことであった。バックの中から懐中電灯を取り出し、口腔内を見てびっくり、とにかく非常に悲惨な状況なのである。ムシ歯はとびきり大きいし、歯肉もしっかり腫れている。おそらく歯のみならず、歯肉も相当部分痛いのではないかと思う。母親に説明していくうちに、周囲にいた数人の養護教員の表情が何か変なのである。話を聞くと歯茎の大切さについては、今まで一度も習ったことはないそうだ。(しかも後日、別の養護教員の話によると養護学校には学校歯科医師はいないそうだ〜後日歯科医師会を通じて調査したら、いらっしゃったそうだ。所詮学校歯科医師の認知度など、この程度のものだ)

週、来院された時、私が母親に「ブラッシングの方法について、どこかで習ったことがありますか?」と尋ねたら「全く、1回も習ったことがない」と答えた。まさか1回も習ったことはないことはないと思うのであるが、とにかくこの母親の頭の中にはそういった記憶は全くないそうだ。

の時私は「私の説明」で表情が変わった養護学校の教員が目に浮かんだ。おそらくは平素よりブラッシングはあまり重要視していないのであろう。しかも脳性マヒの子供はどうしてもケイレン等を生じやすく、ダイランチン製剤を服用している場合が多い。それによって歯肉肥大を生ずるケースもある。私はその辺も含めて母親に説明した。母親は「よく分かりました」と笑顔で帰宅した。しかし、その子は初診回のみの診療でそれ以降は今日に至るまで来院していない。自分の非力さを思い知った。
<2002.2.6>

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