Vol.5-2001.6

運動科学研究所所長 高岡 英夫

いつの間にかポッコリ出てきてしまったお腹、格好悪いなあとは思いながら、なかなか解消できないものです。一念発起で腹筋運動やジョギングをはじめても、意外と下腹は引っ込まなかったり、長続きしなかったり、ついついあきらめていませんか?
そんな方にご朗報! 今回はお腹を引き締め、さらに内臓をゆるめ健康にする、やさしい「呼吸体操」をご紹介します。

 皆さんはお腹を引き締める運動というと、何を思い浮かべますか。やはり腹筋運動や、有酸素運動のジョギングなどでしょうか。実は普通の腹筋運動は、腹部の一番表面にある腹直筋を鍛えるだけですし、またジョギングでは、全身の脂肪を燃焼しますがお腹まわりに特に効くわけではありません。
 腹部を引き締めるためには、体のメカニズムに従って腹部の筋肉をトータルに鍛えることと、ぶよっとしたお腹の身体意識を変えていくことが必要です。腹部には、腹直筋以外に3つの大きな筋肉があり、特に一番内側にある腹横筋が重要な役割を担っています。腹横筋は、肝臓、すい臓、胃、小腸、大腸、子宮までの広範囲を筋肉のコルセットのように包んでいます。ですから、この筋肉を正しく鍛え、内臓をまわりから包むように支えることで、お腹をすっきりと引き締めることができるのです。さらに内臓がほどよく圧迫され、働きも良くなるので、その結果便通なども改善されます。この腹部の複数の筋肉を、バランスよく鍛えることができるのが、今回紹介する「呼吸体操」なのです。さらに「呼吸体操」では、腹部の筋肉だけでなく同時に呼吸筋を鍛えるので、普段の呼吸も深く楽になっていきます。

 更に次のポイントに注意すると効果的です。
ポイント1)
できるだけ余分な力を抜いて、脱力した状態で行うこと。肩や不必要な部分に力みを感じたら、前回ご紹介したゆる体操で力んだ部分を軽く気持ちよくゆすってほぐしてあげましょう。
ポイント2)
呼吸をするときに体の姿勢を大きく変えないこと。大きく背中を反らせて、胸を張りながら息を吸い、逆に体をまるめ前かがみにし息を吐き出すと、胸の前面にしか空気が入らず、背中側の筋肉が固まって健康にもよくありません。「呼吸体操」では、常に楽に気持ちよく背筋が伸びている姿勢のまま、胸(腹)にも、脇にも背中側にも、空気が均等に入るように呼吸してみましょう。このことを「均等呼吸」と言います。「均等呼吸」では、筋肉や骨格をバランスよく使う理想的な呼吸が身につきます。
 では、以上の事に気をつけて、ちょっとした空き時間、通勤時間などを有効利用して、気持ちよく行ってみて下さい。

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