Vol.4-2001.6

東京都 中学校養護教諭 Y・K

になると、どこの学校でも「健康診断」が始まりますが、何故「健康診断」を行わなければならないのか?ご存知でしょうか? 毎年春は、「健康診断」を行うことを生業としている養護教諭にとって、やり甲斐と憂鬱の狭間で揺れ動く、とても複雑な心境になる時期なのですが、その原因は「学校教育法第12条」や「学校保健法第1条」に示されている法律です。この法律の中で4月から6月末までに「健康診断」を行うことが示されているのです。ちなみにこの法律の元をさかのぼると学校の「健康診断」は、明治21年12月の「活力検査に関する訓令」を出発点としているそうで、なんとも歴史のある行事であることがわかります。

の法律で定められている健康診断は大きく分けると2種類の検診に分けられ、一つは身長・体重・視力・聴力の測定を主とする「検査的事項」、もう一つは眼科検診・歯科検診などを行う「学校医・学校歯科医による検診」です。
 中でも、やはり「学校医・学校歯科医による検診」は、冬の寒い時期から日程を組み、会場を確保し、検診器具の滅菌を業者に依頼し、新学期早々、検診がスムーズにいくよう、授業の合間をぬって記録をしていただく教員のローテーションを組み、生徒の流れを指示し…等々、学校医の先生を迎えるにあたって、膨大な労力を必要とする計画の下(ちょっとおおげさ?)実施しているのです。 特に歯科検診は使用する検診器具も多く、介助で歯科医の先生の検診結果を用紙に記入していただく教員を確保するのも、「難しい」「私には出来ない」の苦情も多い、養護教諭泣かせの検診の一つとなっています。

のような難問をクリアしやっと迎えた検診当日。前日に電話連絡はするものの、先生が無事来校してくださるまでは、ハラハラドキドキのまな板の鯉状態です。たとえそれが5分の遅れであったとしても、教科担当の教員に「わたしのクラスは何時から?」「何分で終るの?」との質問ぜめにあっては重大問題です。「授業を進めたいから早くして」と言われても…。生徒の様子にもよるし、先生の検診スピードもあるし、これはかなか難しい質問です。
 以上、このような様々なドラマを背景に学校では「健康診断」を行っているのですが、その主人公である子どもたち反応は?どれくらい関心をもっているのでしょうか?

学期早々、今年度の健康診断日程を配布し、前日には検診毎のお知らせプリントを配布。その上、学級活動の中でも検診を受ける上での注意事項を説明しているのですが…。当日、登校してから「歯磨きしてない、歯ブラシ貸して」と言われても…。「歯ブラシって皆で共有してもいいのかしら?」「一人が使ったら、やっぱり又貸しはちょっとね…」という事で、我が校では「歯ブラシの貸し出し」はしていません。「口を十分すすぎなさい」とは言うものの、磨きもしていない口腔を検診させられる学校歯科医の先生には、申し訳ない気持ちでいっぱいです。それでも歯科検診に対しては生徒の関心度も高く、また、聞きなれない記号も多いので検診前後の質問もかなりあります。特にCO:要観察歯やGO:歯周疾患要観察者などは、保健だよりや検診結果のお知らせで内容を知らせてはいるものの、質問が多く、「今のうちから気をつけてケアしましよう」と説明するものの、結局は「歯医者に行かなくてもいい歯」「なんともないから大丈夫」という感覚の生徒が多い気がします。

こで我が校では、「歯科講話」と銘打って、毎年「ブラッシング指導」を行っています。歯に関するビデオを見て、歯垢の染め出しをして、ブラッシングまでを約1時間かけて、学校歯科医の先生と共に行います。例年、「口裂け女」風に唇の染め出しをする生徒もいるものの、大多数の生徒は熱心に自分の口の中を観察し、ブラッシングを行います。「朝、ちゃんと磨いてきたのにぃ〜」歯をピンクにした女生徒の悲鳴も例年の事です。しかし、生徒にとっては思い出深い保健行事の一つになっている様です。

科検診を行った後は事後指導として、歯科検診結果のお知らせを配布し、治療を勧告しているのですが、例年治療を済ませるのは、勧告を受けた生徒の40パーセント程度です。学校に報告していなくても治療を受けている生徒もいますが、以前、お知らせの返事を出さない生徒の経過が気になり調べた結果、返事を出さないまま3年間「う歯があります」のおしらせを貰い続けた生徒が、クラスで2〜3名はいることが分かりました。そんな生徒が将来きっと困る事になる前に、有効な指導を行いたいと思います。

年の歯科検診は、良いキッカケです。このチャンスに子どもの関心をガッチリ掴み、今後の治療に役立てて欲しいと思います。
 歯科検診時の先生の言葉がけに期待させていただいています。

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