味彩通信
Vol.91-2009.7
かぐやのサリャンカ

 私の住んでいる岩手の水沢には「国立天文台水沢観測センター」があります。昨年、月から青い地球の画像を送ってくれた探査ロケット「かぐや」プロジェクトの多くをこの「国立天文台」が担っています。以前は「水沢緯度観測所」という名称で知られ、世界で7箇所、北緯39度8分にあり地球の地軸の傾きを調べる観測所のひとつでした(名称は変わりましたが現在でも観測研究がおこなわれています)。宮沢賢治の童話「風の又三郎」の文中にも「水沢の緯度観測所のテニスコート」が出てきます。

 ロシアの女性科学者ナターシャ・ペトロワさんは「かぐや」プロジェクトのため、半年程この「国立天文台水沢観測センター」に滞在していました。宿舎はセンター内にあり街に出る機会が少ないので「一般人」の暮らしも見たいとのご希望。私の経営する喫茶店「りょんりょん」にサンクトペテルブルグから来た友人のタマラ・イヴァノワさんと一緒においでいただきました。

 事前に彼女からメールでもらったレシピをもとに「ソーセージのサリャンカ」と「トマトとチーズのサラダ」を作り試食してもらったところ「ロシアで食べるのと同じ味よ!」とお褒めの言葉をいただきました。彼女は、金髪、青い目、白い肌にピンクの頬・・・、たぶん同年代なんだろうけど羨ましいほどきれい。

 おいしいものを食べると片言英語でも話がはずみ、彼女が相当著名な科学者で「ロシアの頭脳」的存在らしいことが判明。友人のタマラさんも世界的に有名な(聞き逃したけど何かの)プログラマーで、「ヨコハマで(その何だかの)学会があって来日して友人のナターシャに会いに来た」のだそう。

 サリャンカはロシアの家庭料理でスープのような、ごった煮のようなもの。家庭や地方、季節によっても材料はさまざまらしい。玉ねぎ・じゃが芋・人参などの野菜とロシア独特のきゅうりのピクルスを使い酸味をきかせるのが基本、あとは魚、肉、きのこなど手近な材料を加えて作るとか。日本ではそのロシアのピクルスが手に入らないのでスーパーで売っている「きゅうりのピクルス」で代用しました。
 たっぷりの野菜とピクルスの酸味が食欲をそそり、さっぱりとした後味が心地よい。

 「すっぱいものは疲労回復につながる」「研究という仕事がら手の込んだ料理はめったにしないわ。でもこれもかんたんだから作ってみて」とトマトとチーズのサラダも教えてくれた。

 機会があったらもっとたくさんのレシピを教わりたかった。半年で帰っちゃうなんて残念!

 でも、最近「7月にまた水沢に来るらしい」との情報が入った。さて今度は何を教えていただこうかしら? 楽しみ楽しみ。

ソーセージのサリャンカソーセージのサリャンカソーセージのサリャンカ
及川喜久子

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