味彩通信
Vol.87-2009.3
春待つこころ

 例年にない暖冬で、降った雪はすぐにとけ「寒」のさなかには土砂降りの雨が降りました。ぽかぽか日和が続き1月だというのに「蕗のとう」が顔をのぞかせたとたん、こんどは猛吹雪が吹き荒れ一日で積雪が30センチになりました。

 昨年ポスター問題でワイドショーをにぎわせた地元の「黒石寺蘇民祭」、深い積雪が主役のこの祭り、雪が無ければ男衆は泥まみれで怪我の心配もあったのですが、前日の猛吹雪がもたらした雪の中で無事開催されました。
 日常生活から季節の行事まで「いつもどおり」ではないことに振り回されて岩手の新年が明けふた月すぎたところです。

 この時期、北国ならではの「寒締めほうれん草」がおいしく、担当のテレビやラジオの番組でご紹介しています。「寒締めほうれん草」は雪や寒さに遭うと植物が体内の糖度やビタミンを増やし凍結を防ぐ力を利用して栽培されたもの。見た目は平べったく葉も黒みがかってゴツゴツとしていますが、食べてみると柔らかく深い甘みがあります。“寒締めほうれん草とベーコンのカルボナーラ”を作ってみませんか?

寒締めほうれん草とベーコンのカルボナーラ風寒締めほうれん草とベーコンのカルボナーラ風
このほうれん草は地面にへばりつくように育つので葉や茎には細かな土が付いています。
ていねいに洗ってから調理してください。加熱すると緑色がひときわ鮮やかになります。
ベーコンの茶色、卵の黄色とほうれん草の緑が食欲をそそってくれますよ。
ちなみにスパゲティが定番ですが、讃岐うどんのゆでたてを使うと麺にソースがほど良くからんで、おいしさもひとしおです。

 節分・立春暦はどんどん春に向かって行きますが「百年に一度」と言われる不景気の影はまだ真冬にさえなっていない様子。
 寒締めほうれん草のように「不況の冬」を乗り切って体内に「何か良い物」を蓄えられれば、と思うこのごろ。
 「春待つこころ」は春待つ食材からいただきましょう。

及川喜久子

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