味彩通信
Vol.82-2008.8・9
女の夏手仕事

 このところ、ヒマにあかせて、せっせと保存食づくりに精を出しています。
 それなりの労力は必要なのですが、自家製ならではのおいしさへの期待とともに、その手間のかかる作業こそがなんとも快感! ひたすららっきょうの皮をむいたり、梅のへたを竹串でほじほじしたりしていると、最中は頭が気持ちよくからっぽになり、終わったあとは、広げた新聞紙の上にこんもり積もった薄皮なんぞを眺めて、カタルシスにうっとり。かくして今、我が家の台所の床や冷蔵庫には、らっきょうに梅シロップ、レモン酒に牛肉のそぼろ佃煮、トマトソースなどがゴロゴロという次第。

 最近は料理好きな男性も結構いますが、一般にこういう時間をかけたちまちま手仕事は、女性の楽しみ。普段の料理でも、男性はパパッと豪快につくれる炒め物などを得意とする人が多いように思いますが、じっくり味を含める煮物や、ことこと煮込んだシチューが自慢、という人はあまり見たことがありません。

 そうそう、そういえば…。以前、鹿児島県・枕崎へ、かつお節づくりの取材に出かけた時のこと。かつお節は、かつおを包丁で解体し、大釜で茹でてから、中骨を手作業で一本一本抜いていくのですが、骨抜きを扱う女性たちの手際の良さ、スピードは目にも止まらぬ早さ。ぽぅ〜っと見惚れていると、工房のご主人曰く「僕らもあの作業をせんことはないですが、女の人の手にはとてもかなわんですよ。あの仕上がりの精度と根気強さは、どんなに経験を積んでも男ではつとまらんです」とのこと。のちに、丹波の黒豆を取材したときも、小さな豆をひと粒ひと粒、品質ごとにより分ける作業は女性の独壇場。案内をしてくれた男性は「仕事とはいえ、おそらく僕なら、一時間もやったら、逃げ出したくなるでしょうね」と苦笑していましたっけ。そしてそんな話を聞いて、私は、これは女性が積んだ徳のひとつとガッテンガッテン!
 なぜなら、太古の昔より、好きとか得意とかは関係なく、一年365日繰り返し繰り返し同じように、日々の食事を調え、昼夜を問わず子どものおしめを替え、家をこざっぱりと掃き清めてきた歴史が、針仕事なども含め、自然にこまごまとした、ある意味単調とも言える作業を、楽しみとして感じられるように、女性をつくってきたに違いないと腑に落ちたからなのでした。

 というわけで、普段は、“おおざっぱ”という意味を多分に込めて、“男らしい!”と評されることもある私ですが、たまさか保存食づくりに快感を覚えたりすると、なんとなく「私もおなごでありましたかのぅ?」と、しみじみ思う今日この頃なのでした。
佐伯明子

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