味彩通信
Vol.59-2006.5
ばっけ味噌

 あんなに積もっていた雪も3月に入ってどんどん融けて、4月の声を前に北国の庭も草花の芽がたくさん出てきました。白鳥の北帰行もあっという間、100羽もの大編隊が北を目指して飛ぶ姿は感動的でした。今年は雁の大群のVの字飛行も見ることができて7歳の息子とふたり「わぁわぁ」と歓声をあげて喜びました。

 「ばっけ味噌はまだつくらないの?」と友人に聞かれて「あ、そんな時期!!」と大慌て。春のかおりの「ばっけ味噌」(ふきのとうの味噌)を皆心待ちにしてくれる。
 庭のばっけ(ふきのとう)を見るとまだ少し早い。長いこと雪の下になっていたので今年は外側が茶色くなっていてまだつぼみの状態。
 その後、雪が降ったり雨が降ったりの繰り返し、2、3回お日様に恵まれたら程良く開いてあの萌黄色が庭のそこここに。

 ペティナイフを持って庭にでると息子も追いかけてきました。ふきのとうは付け根から切り取るのですが、うちの庭のものはとても大きくかたく切り取るのに力がいるのです。「オレもきりたい」と言う息子。ナイフを持たせてみたら意外と上手に切るのでまかせることに。
 新2年生の息子、入学から一年経って随分と大きくなりました。私が探し出すばっけを彼が切ってバケツの中に放り込む。以前この「ばっけとり」をしていて冬眠中のカエルを起こしてしまったことがあり「あのカエルまた寝たのかなぁ」「起こしてしまって気の毒なことしたよね」「いや、目覚ましになってよかったかも」と息子と話したことを思い出す。

 10分ほどで小さなバケツはいっぱい、60個のばっけが採れた。まわりのよごれをとり、水洗いして刻み、ごま油で炒める。しんなりしたら酒をひたひたに入れ砂糖を加える。おかかを粉状にして隠し味に加え味噌を投入、ここからは中火にしてひたすら混ぜる。油断するとこげるので目がはなせない。
 ふきのとう独特のかおりが家じゅうに漂いはじめる。以前息子は「げっ、くさい!!」なんて言って鼻をつまんでいたが、今年は何も言わない。どうやら慣れたらしい。
 このふきのかおり、花粉アレルギーに効果があるとか。花粉に弱い私には鼻がすっと通る感じが心地よい。きっと効いているにちがいない。根気強くまぜて練って2時間、味噌が煮詰まったらできあがり。

 味見をしたら例年より苦味が強い。やはり長い間雪に埋もれていたからだろうか?
 この冬の寒波、いろんな後遺症が今現れてきて対策にいそがしい。雪の重みで庭木は折れ曲がり、凍結して素焼きの植木鉢は割れ、例年なら屋外で冬を越せる鉢物も寒さで枯れてしまった。
 それでも木々の芽が萌えていよいよ北国の春到来。
 「ばっけ」に続いて「たらの芽」「しどけ」「わらび」と山菜とりのお楽しみが待っている。

 自然の強さ、怖さを実感したこの冬、人間の勝手ばかりがまかり通らないことを思い知らされて、「いつもの季節」が来るありがたさをしみじみ感じ、せいぜい「地球温暖化」ストップのために無駄なCO2を出さないよう心がけなくては、と心に誓って「ばっけ味噌」でご飯をいただいております。

ばっけ味噌(ふき味噌)レシピばっけ味噌(ふき味噌)レシピ ばっけ味噌(ふき味噌)レシピ
及川喜久子

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