味彩通信
Vol.48-2005.4
丸ごと春らんらん

 春とはいえまだまだ風の冷たい今日この頃。でも不思議なことに、どんなに寒くてももう“今夜はアツアツお鍋であったまりましょ”という気分にはならなくて、やっぱり春らしいものが食べたくなります。

 今は食材もどんどん季節の先取りで、年が明ける前から山菜なども手に入るようになりましたが、やはり本当の旬を迎えた素材は、見るからにパワー全開。特に野菜は、冬の間にいじいじとちぢこまっていた人間と違って、春にむけてエネルギーをたっぷり蓄え、生命の躍動感に満ちています。ちまちました小手先の料理なんて、太刀打ちできない感じ。

 実はこのところ、“野菜を皮まで丸ごと食べる”といった料理が、静かなブームです。まぁ昔と違って野菜自体にアクが少なくなってきた、というのも関係があるのでしょうが、皮と身の間にこそ旨みがつまっている、といった考え方が浸透してきているよう。言われてみれば、確かにりんごだって丸ごとかじったほうがおいしいし、フライドポテトだって皮付きのほうがどっしりとエネルギッシュな味わいがあります。なるほどね。

 先日も取材で教えていただいたのは、新にんじんを丸ごと使ったサラダ。にんじんを皮つきのまません切りにして、オリーブオイルと塩、レモンだけで味つけしたものなのですが、これがまたなんとも清冽なおいしさ。にんじんの甘さをレモンの酸味が引き立てていて、もう、どんぶり一杯食べられそう。ザクザクと心地よい食感は、皮つきならではの醍醐味です。

 そういえば、皮を食べはしませんが、そら豆をさやごと焼くというのも最近よく見かけます。これはウチでもよくやるのですが、さやに切れ目を入れて、そのまま蒸し焼きにするというもの。さやがコゲコゲになるまで焼くと、中の豆にほっくり火が通るのです。豆だけを取り出してゆでてしまうより、ず〜っと香りも旨みも残ります。しかも大皿にどんと盛りつけると見栄えもよくて一石二鳥!

 元気いっぱいのエネルギッシュなパワーにあやかるなら、“皮つきの丸ごと!”でぜひ。

佐伯明子

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