味彩通信
Vol.42-2004.8・9
夏のじゅんさい鍋

 このところ、ちょっとしたブームともなっている“お取り寄せ”。なにしろ流通が発達したおかげで、居ながらにして全国のおいしいものを、気軽に食卓にのせることができるのですから、食いしん坊にとっては本当にありがたいお話し。

 最近では雑誌でもお取り寄せの特集を組むところが増え、私のところにもそういう企画取材のお仕事が舞い込むことが多くなりました。で、これがまた楽しいんだなぁ。

 撮影時、全国からスタジオに集められたたくさんの小包を次々と開ける時のわくわく感も格別ながら、もちろん一番のお楽しみは試食。でもまぁ正直に言うと、「世の中にはまだまだこ〜んなおいしいものがあったのね」と思うものもあれば、「なんじゃこりゃ?」というものや、「なんでもかんでも取り寄せられればいいってもんでもないだろう!」と毒づきたくなるようなものもあります。もっともこれは好みの問題もあり、男女差や生まれ育った地域などで、スタッフの中でも意見が分かれることもしばしば。特に佃煮やお菓子、お総菜系など、加工品の判定は難しいところです。一方、必ず意見が一致するのが果物や野菜、魚介などの生鮮食品。これらは産地からもぎたて、獲れたてが届くわけですから、ほぼ100%と言ってもいいくらいの当たり、まじりっけなしの確かなおいしさ。

 中でも最近のヒットは、秋田のじゅんさいと、瀬戸内のすだちです。
 どちらも近所のスーパーで手に入るといえば入るのですが、やはり味と鮮度がまったく違う。しかもと〜っても安い!じゅんさいは1パック1kgで1200円、すだちは1箱40個くらい入って2000円くらい。どうです、安いでしょう?送料を払ってでも、取り寄せる甲斐あり。

 で、このふたつで作るのは“じゅんさい鍋”。
 ぷりっぷりと太ったじゅんさいは、表面のつるんとしたぬめりと中のシャキシャキとした歯ごたえも心地よく、レモンやライムとはまたひと味違うすだちの爽やかな香り&風味とぴったり。身体の中を青い風が吹き抜けるような清涼感にあふれた、まさに期間限定、夏ならではの味わい。さらには焼酎のオンザロックにも、すだちをぎゅ〜っとたっぷりしぼって、くいっと呑めば、アツアツ鍋とひえひえのコントラストのまた絶妙なこと。

 あ〜、お取り寄せさまさまだぁ。
佐伯明子

佐伯明子さんのプロフィールはこちら


INDEX